3手目25歩に論理はあるか(3)

3手目25歩に論理はあるか(2)(前回の記事)

3手目25歩に対し振り飛車で挑み続けた菅井先生ですが、遂に居飛車で対抗する日が来ました。

12/16放送のNHK杯3回戦、対するは羽生善治竜王(当時)です。

初手から
▲26歩 △34歩 ▲25歩 △33角 ▲76歩 △42銀 ▲48銀 △32金

48銀に84歩で後手が角換わりを志向したらどうなるかという話をしてきましたが、菅井先生は32金と指しました。

これは84歩よりも含みを持たせた手で雁木や力戦調の振り飛車になる可能性も残しています。

局面を進めます。

実戦は菅井先生が居飛車を確定させるも飛車先を突かずに進めました。

そして迎えた上図、84歩とこのタイミングで飛車先を突きました。

さてここが問題の局面です。

第1回の記事で述べたように、後手の飛車先交換を防ぐにはここで33角成が必要です。

しかしそれでは84歩型を維持している後手が通常の角換わりより理論的に得をしており、3手目25歩は菅井先生への実戦的な対策であって、そこに論理はないことを認めることになります。

一方例えばですが37桂85歩68玉のように進め、飛車先交換を許す代わりに早い動きを見せるのであれば、それは3手目25歩に論理を持たせたことになります。

羽生先生の選択は33角成でした。

数手進めます。

この局面で菅井先生は85歩と突き、形の上では通常の角換わりに戻りました。

ここまで85歩を保留したことにより駒組みの段階で先手の有力な変化を消していたのか、そもそも3手目25歩を咎めるつもりは無く角換わりの後手番をやるつもりだったのか、咎めるつもりで研究してきた形から外れてしまったので通常形に戻したのか、はたまた84歩型は見た目だけの得で実際に84歩型を後手が活かす変化は存在しないのか。

この辺りは菅井先生にしかわからないところで、私の棋力では推測することも到底できません。

しかし、あくまで結果的に見て「菅井先生は3手目25歩に対し居飛車で挑んだが、直接的にそれを咎めるには至らなかった」とは言えるでしょう。

後日行われた順位戦B級1組9回戦、畠山鎮七段との対局では、畠山先生の3手目25歩に菅井先生は振り飛車を採用し敗れています。

こうした状況で迎えたのが1/10の順位戦B級1組11回戦、相手は谷川浩司九段です。

続きます。

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この記事を書いた人

徳島の将棋好き
"急戦で先攻する"が信条
33金型早繰り銀の開発者

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