3手目25歩に論理はあるか(4)
迎えた順位戦B級1組11回戦、菅井先生はここまで2勝7敗で残留を目指す上での大一番と言えます。
先手は谷川先生です。
初手から
▲26歩 △34歩 ▲25歩 △33角 ▲76歩 (第1図)
谷川先生の作戦は3手目25歩でした。
第1図から
△42銀 ▲48銀 (第2図)
ここで54歩や44歩なら振り飛車が濃厚です。
第2図から
△84歩 ▲33角成 △同銀 ▲68銀 (第3図)
菅井先生は84歩、羽生戦に続き居飛車で戦う意思を見せました。
対して谷川先生は9分の小考で33角成、飛車先を受けずに戦う展開と比較したものだと思われます。
菅井先生が84歩型を活かす構想を見せてくれるのか、どきどきしながら観戦していましたが次の一手は想像すらしていませんでした。
第3図から
△22飛 (第4図)
やってくれました。
角交換振り飛車を封じる狙いの3手目25歩に対し角交換振り飛車を実現しました。
しかもこの向かい飛車はこのまま収まってしまえば、従来の角交換四間飛車と比べて①先手から角交換している②四間飛車に途中下車していない で二手得です。
警戒して封じたはずの相手がより強力になって目の前に現れたのですから先手からしたらたまったものじゃありません。
実戦もその手得が存分に活きる進行となりました。
局面を進めます。
先手が6筋に位を張った局面ですが、後手の銀冠が完成しているのに対して先手は玉周りに不安があります。
これが後手が通常の角交換四間飛車だとすると78金・68金右の二手が入っている計算ですから先手玉の強度がまるで違います。
いかに序盤の二手得が大きいかがわかるでしょう。
そして実戦は上図からから54歩。
53角と打たせて玉頭の厚みで勝負する見事な構想で、結果も菅井先生の快勝となりました。
さあ、というわけで角交換振り飛車封じの3手目25歩に対して、菅井先生は素晴らしい構想で角交換振り飛車を実現し先手の3手目25歩を完全に咎めて勝利を収めました。
…とこうまとまればいいのですが、話はそう上手くはありません。
勘のいい方はお気づきでしょうが33角成同銀となったこの局面
ここで88銀とすればいいのではないかと。
即ち本譜で68銀22飛に83角と打つと88角と打たれて先手が困ります。
しかし68銀に代えて88銀なら22飛には83角で先手がいいのではないか?
これについては他ならぬ菅井先生が局後の感想で「68銀を見て22飛とした、88銀なら居飛車になるところ」と仰っています。
だったら今まで4回も掛けて何を説いてきたんだバカヤロウという声が聞こえてきます。
さてと
ここからが本題です。
88銀に22飛ってありませんか?
次回に続きます。
コメント