3手目25歩に論理はあるか(1)
26歩34歩に25歩と突く作戦があります。
33角に76歩として後手の作戦を限定させる狙いです。
横歩取りと一般的な角交換振り飛車は選択肢から消えます。
42銀と上がればゴキゲン中飛車には出来ますが、丸山ワクチンを手損なしで出来る等通常型より先手の選択肢が増える一方、後手は42銀を決めているので選べる形が限定されます。
良い事だらけのようですが重大な構造的問題を抱えています。
後手が角換わりを志向してきたときです。
即ち初手から▲26歩△34歩▲25歩△33角▲76歩△42銀▲48銀△84歩と進む展開です。
ここで78金とすると85歩と突かれて先手は飛車先交換を許すことになります。
もちろんこれはこれで一局で以下▲36歩△32金▲37銀△86歩▲同歩△同飛▲46銀が一例です。
飛車先を交換させる代償に先手は足早に右銀を繰り出し攻めの態勢を作ります。
数年前から増えてきた指し方でこれは3手目に25歩と突いて33角を決めさせたからこそ可能な戦法です。
言うなればこの指し方には論理があります。
しかしながら84歩には33角成同銀88銀として角換わりにしてしまう指し方が主流です。
そしてこれこそが3手目25歩の構造的問題です。
通常の角換わりでは先手26歩型、後手85歩型で駒組みが進みます。(下図は組み上がりの一例)
しかしながら3手目25歩から角換わりにした場合には先手25歩型、後手84歩型となります。(下図は組み上がりの一例)
先手の25歩型はともかくとして後手の84歩型は85桂の余地があって明らかに後手の得です。
84歩型で進めたいがために一手損角換わりなる戦法が生まれたほどです。
即ち3手目25歩からの角換わりは通常の角換わりに比べて先手は理論的に損をしています。
言うなればそこに論理はありません。
(これが実際に損になるのか、具体的に後手が85桂と跳ぶような展開を見せて局面を有利に運べるのかは別問題であることは断っておきます。)
ところがこの「論理のない3手目25歩」がプロ棋士の対局で頻出しています。
アマチュアなら持ち時間が短いこともあり、実際に84歩型を活かされることはそう多くはないでしょう。
この場合自分の得意型に持ち込むことの方が大きいと見るのは十分理解できます。
しかしながら何故プロ棋士が序盤で損をするリスクを取ってまで3手目25歩を選択するのでしょうか。
理由は対局相手にあります。
後手番を持った時に、他の棋士に比べて明らかに3手目に25歩と突かれることが多い棋士が二人います。
久保利明先生と菅井竜也先生です。
続きます。
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