33金型早繰り銀の実戦的諸問題(1) 〜先手▲77銀保留.1〜
将棋の理屈として悪いはずは無いんだけど、実戦で指されたら対応が難しい。
そんな手順を扱っていきます。
第1回は先手が▲77銀と上がる手を保留して、後手に飛車先交換を許す形です。
初手から
▲26歩 △84歩 ▲25歩 △85歩 ▲76歩 △32金 ▲77角 △34歩 ▲88銀 △33角 ▲同角成 △同金 ▲78金 △72銀 ▲38銀 (基本図)
▲38銀に代えて▲77銀と上がれば定跡型です。
▲38銀は陣形を低く保つことで、後手からの△75歩▲同歩△同銀の当たりを弱くする意味があります。
一方で後手に飛車先の交換をする権利を与えています。
ここのバランスがどうなっているか。
基本図から(1)△74歩 (2)△86歩 の手段が考えられます。
基本図から
△74歩 ▲46歩 △73銀 ▲47銀 (第1図)
後手は▲95角の王手飛車が生じるタイミングでは歩交換はできません。
したがって△86歩と動けるのは
1.△74歩と突く前(基本図)
2.△64銀と上がる前(第1図)
のいずれかに限定されます。
第1図から(a)△86歩 (b)△64銀 を順に見ていきます。
第1図から
△86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87歩 △82飛 ▲56銀 (第2図)
(a)△86歩からの1歩交換は価値の高い手ですが、このタイミングでは「銀の進出が1手遅れる」デメリットが大きくのしかかります。
第2図から
△64銀 ▲66歩 △54歩 (第3図)
△64銀に▲66歩が間に合ってしまうのが、飛車先交換による1手損&先手の▲77銀保留による1手得の影響です。
△54歩に代えて△75歩は▲65歩と突かれて攻めになりません。
第3図から
▲65歩 △55銀 ▲同銀 △同歩 (第4図)
▲65歩に△53銀と引くのでは早繰り銀の顔が立ちません。
△55銀とぶつけて銀交換を迫るのが形ですが、▲同銀△同歩となって第4図。
定跡の先手56銀型では8筋・7筋で2歩を手持ちにし、先手を76銀・87金の形にさせた上で△55銀とぶつけていました。
この変化と第4図を比較すると、本譜が如何に先手にとって条件が良いか見て取れるでしょう。
金銀の形は安定している上に、後手の持ち歩は1枚、そして何より後手は居玉です。
第4図から
▲64歩 △同歩 ▲53角 △42角 ▲26角成 (結果図)
居玉が祟って、後手陣には▲53角と打ち込む隙が生じています。
▲64歩△同歩を入れておけば、▲53角には△42角の一手となり、馬を引きつけて結果図。
盤上の馬と角の働きの差が大きく、1歩得では割に合わない状況です。
少なくとも先手の馬を制限するべく守勢に回るのは、後手が望む展開では無いでしょう。
第1図から(a)△86歩は▲77銀保留の効果が最大限に発揮され、先手有望です。
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