33金型早繰り銀(8) 〜先手37桂型.1〜

↓前回の記事

さて今回から先手が37桂を急ぐ指し方を見て行きます。

33の金に狙いを付けて反撃を見せおり、後手からすると最強の敵です。

下図をテーマ図Bとします。

テーマ図Bまでの駒組みを下に示します。

詳しい手の意味は 33金型早繰り銀(2) を参考にして下さい。

初手から
▲26歩 △84歩 ▲76歩 △85歩 ▲77角 △34歩 ▲68銀 △32金 ▲78金 △62銀 ▲25 33同角成 △同金 ▲77 7438銀 △73銀 ▲36歩 △64銀 ▲37桂 △44歩 ▲46歩 △42玉 (テーマ図B)

先手は低い陣形のまま右桂を活用します。

37桂に44歩は必要な手で、これを入れないと75歩同歩同銀と攻めた時に45桂の反撃が厳しすぎます。

後手が王手飛車を避けて42玉と上がった局面がテーマ図Bです。

テーマ図Bから
▲48金 (第2-1図)

48金が37角や15角の王手飛車を避け、いつでも45歩同歩同桂の仕掛けを可能にしてなかなかの手です。

このまま待っていても、47銀〜29飛〜58玉とどんどん先手の形が良くなっていくので、後手はここで動きます。

(a)75歩 (b)54角を順に見ていきます。

第2-1図から
△75歩 ▲同歩 △同銀 ▲45歩 (第2-2図)

75歩はシンプルな攻めですが45歩が厳しい反撃です。

これを同歩と取るのは24歩同歩45桂で先手の攻めが早くなります。

第2-2図から
△86歩 ▲同歩 △同銀 ▲同銀 △同飛 ▲87歩 △82飛 (第2-3図)

後手は予定通り銀交換をして、次に39銀の割り打ちを狙います。

第2-3図から
▲44歩 △39銀 ▲29飛 △48銀成 ▲同玉 (第2-4図)

対して先手はあっさり割り打ちを許してしまうのが好判断です。

第2-4図では先手陣も心許ないですが、それよりも44歩の拠点が大きく残っています。

持ち駒の角銀銀と合わせてかなりのプレッシャーです。

第2-5図から
△44金 ▲77角 (結果図)

44金は45桂や43銀、55角の筋を消してこれぐらいですが、77角と浮いた金を狙って結果図

後手は44の金に紐をつける必要がありますが、43歩は45歩、33角には45歩54金44銀、33金には45銀43歩44銀同歩45歩

いずれも先手の攻めが急所に刺さっており先手優勢は間違いないでしょう。

第2-1図から(a)75歩と仕掛けるのは45歩の反撃が厳しく先手優勢です。

↓次回の記事

33金型早繰り銀(7) 〜先手56銀型.4〜

↓前回の記事

 

第1-12図に戻り (b) 16歩 を見て行きます。

第1-12図から
▲16歩 △52金 ▲17桂 (第1-18図)

先手は最速で桂を活用します。

ここで14歩などとすると、25桂32金23歩成同金24歩同金33銀の猛攻を浴びてしまいます。

以下同桂同桂成同玉に55角が王手飛車です。

55角が残っている状態で25桂と跳ばせては、後手は持ち堪えられません。

第1-18図から
△73角 (第1-19図)

先手からの55角を消しつつ飛車のコビンを狙う73角が急所の手です。

対して ① 47銀 と ② 29飛 が考えられます。

第1-19図から
▲47銀 △55角 ▲66銀 △64角 ▲25桂 △32金 (結果図)

47銀は歩を守って自然な手ですが、銀が引いたことで55角と覗く手が生じます。

対して77歩は35銀で24銀と46銀を狙って後手十分。

66銀と受けるのが自然ですが64角と引いておけば、銀を使わせた効果で次の76銀が厳しい狙いとなっています。

25桂は一回入りますが32金と引いておいてこれ以上の追撃はありません。

結果図は先手の攻めがつんのめっている印象で、後手の方が方針の分かりやすい将棋と言えるでしょう。

第1-19図から
▲29飛 △46角 ▲48金 △24角 (結果図)

29飛は46角を許しますが、隙なく構えて後手の角を負担にさせる方針です。

後手は2枚の歩を頂いて結果図

24の角はかなり狭いようですが、例えば55銀として角の捕獲を狙ってみても23金と逃げ道を作ってこの角はなかなか捕まりません。

局面が落ち着けば2歩得が物を言うので、結果図は互角ながら後手に楽しみが多い将棋です。

第1-12図から (b) 16歩 は難しい将棋ですが、後手も十分戦えそうです。

以上をまとめると、テーマ図Aに戻って (1) 66歩 は後手十分 (2) 同歩 は難解ですが後手も戦えます。

先手が腰掛け銀に構えるのは後手からして怖くはない結果となりました。

次回から先手が37桂を急ぐ指し方を見て行きます。

↓次回の記事

33金型早繰り銀(6) 〜先手56銀型.3〜

↓前回の記事

33金型早繰り銀(5) 〜先手56銀型.2 (前回の記事)

第1-12図から (a) 45歩 (b) 16歩 を順に見て行きます。

第1-12図から
▲45歩 △52金 ▲46角 (第1-13図)

46角は八方睨みの好位置で、角換わりでは頻出の手です。

56銀との相性も抜群でかなり安定した位置と言えます。

第1-13図から
△64角 ▲同角 △同歩 ▲46角 △63金 ▲36歩 (第1-14図)

46角に73歩は受けになっておらず74歩と合わされて先手の攻めが加速します。

64角は唯一の受けで、対して55銀には35銀が返し技でこれは後手が指せます。

63金に対しては65銀という派手な手もあり激しくなります。

65銀35銀64銀46銀63銀成47角と一直線に進んだ局面がどうか。

後手も怖い恰好ですが、95角の筋もあり何とか残していそうです。

本譜36歩は35銀を消しつつ37桂を見せて自然な手です。

先手はこの後どんどん形が良くなっていくので、後手もぐずぐずしてはいられません。

動きます。

第1-14図から
△77歩 (第1-15図)

77歩が急所の叩きです。

対して88金は79銀77金88歩

同桂は76歩65桂72飛73歩同桂

いずれも後手良しです。

第1-15図から
▲同金 △76銀 (第1-16図)

従って77歩には同金の一手ですが、そこで76銀がごつい手

同金87飛成は後手優勢なので先手はこの銀を取ることが出来ません。

第1-16図から
▲78金 △87銀成 ▲83歩 △72飛 ▲77歩 △78成銀 ▲同飛 (第1-17図)

83歩は手筋で同飛なら72銀がありますが72飛とかわす手が幸便です。

先手は必至の防戦ですがかなり不安定な形になりました。

爽やかに決めます。

第1-17図から
△76歩 ▲同歩 △77歩 (結果図)

76歩から77歩が軽妙な攻めで決め手です。

以下同飛は86角、同桂は87金、88飛は76飛79歩87歩28飛86角

いずれも後手優勢です。

第1-12図から (a) 45歩 は36歩の瞬間に77歩同金76銀の強手が決まり後手優勢です。

↓次回の記事

33金型早繰り銀(5) 〜先手56銀型.2〜

↓前回の記事

 

今回はテーマ図Aから (2) 同歩 を見て行きます。

テーマ図Aから
▲同歩 △同銀 ▲24歩 △同歩 ▲25歩 (第1-11図)

24歩から25歩の継ぎ歩は早繰り銀に対する常套かつ最強の反撃手段です。

後手は手が広い局面ですがシンプルに銀交換に出る順を本譜とします。

第1-11図から
△86歩 ▲同歩 △同銀 ▲同銀 △同飛 ▲87歩 △82飛 ▲24歩 △22歩 (第1-12図)

86歩以下は必然の進行で第1-12図まで進みます。

後手は銀と2枚の歩を手持ちにしたこと、先手は2筋を詰めたことが主張です。

そしてここで33金型の長所が表れます。

下図は同じ局面を33銀・32金型にした仮想図です。

この場合23銀が強烈な打ち込みになります。

以下、同歩同歩成は先手成功ですが31金と引くのも22銀不成と突っ込まれって状況は変わっていません。

したがって後手は32銀成を甘受するしかありませんが、極端に玉が薄くなる上、24歩も拠点として残り続けとても強い戦いができません。

先手優勢は間違いないでしょう。

ところが第1-12図では23銀の打ち込みがありません。

33金型は後手番で早繰り銀を実現するための構想でしたが、その33金型が早繰り銀最大の敵「継ぎ歩」に対して耐性があるというのは余りにも嬉しい副産物です。

さて第1-12図から先手は玉を囲うのは難しいので攻撃の態勢を作って行きます。

そのために右桂を使う必要がありますが、36歩〜37桂と自然に活用するのでは37角の王手飛車と桂頭という二つの傷を抱えています。

例えば36歩52金37桂と素直に進めるとすかさず35歩と突かれます。

36歩52金68玉には64角(次に46角と77歩の狙い)

36歩52金58玉には54角(次に87角成と36角の狙い)

と王手飛車を避けても、それぞれ厳しい攻めが飛んできます。

何より36歩〜37桂とするのなら右銀は桂頭を守る意味で47にいた方が良く、腰掛け銀にした意味がありません。

従って第1-12図から
(a)45歩:46角と設置して37の傷を消しつつ後手の攻めを牽制し、ゆっくりと右桂を活用する。
(b)16歩:17桂〜25桂として37にスペースを作らずに最速で右桂を跳ねていく。
の二つを候補手として見て行きます。

↓次回の記事

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「藤井聡太全局集」を並べてみた

「藤井聡太全局集 平成28・29年度版」を一通り並べ終わりました。

デビュー戦となる加藤一二三九段戦からC級2組最終戦の三枚堂達也六段戦まで、全59局が収録されています。

構成について

第1部(全208ページ)と第2部(全99ページ)に分かれています。

第1部では29連勝達成の増田四段戦や朝日杯決勝広瀬八段戦など、特に重要な対局12局をピックアップして、藤井フィーバーに揺れ動く将棋界やプロ棋戦での戦法の移り変わりなどの話も交えながら、盤外のことも含めて一局一局が丁寧に解説されています。

第2部では全59局の内から第1部の12局を除いた47局が収録されています。
一局当たり見開きで2ページ、始めに初手からの棋譜を記した後、ポイントとなる手に解説が入ります。
また一局当たり4,5枚の局面図が付いています。

構成はよくあるタイプの全局集ですね、読みやすく並べやすいです。

そして全局を通して村山慈明七段が解説を担当しています。

これが素晴らしい。

一局を通して好手や疑問手、ポイントとなった局面については歯切れよく簡潔に解説し、遠大な構想や正確な大局観が顕れた局面ではその能力を絶賛しています。

しかし何より注目すべきは序盤戦です。

アマチュアではとても気付けない手順の工夫を解説してくれています。

例えばこの局面(C級2組順位戦 星野四段戦)

後手が藤井四段(当時)です。

ここから実戦は
△86歩 ▲同歩 △73桂 ▲78金 △65桂 ▲59角 △44銀 と進みます。

86歩の突き捨ては少し早い印象ですし、65桂と跳ぶ前に44銀と溜めてみたい気がします。

しかし何とこれが必然手順、86歩は73桂の前に入れる必要があり、44銀と先に上がると65桂と跳べなくなると言うのです。

この様な細やかな工夫が本書ではかなり取り上げられています。

村山七段の序盤知識と丹念な局後検討がないと出来ないことでしょう。

藤井七段と言えば圧倒的な終盤力と卓越した勝負術にどうしても目がいってしまいますが、精緻な読みに裏付けられた繊細な序盤も非凡なものだと気づかせてくれます。

そしてこの全局集、当の藤井七段による文章が一つだけ掲載されています。

それが本書の最初のページにある「はじめに」

たった1ページだけの文章ですがこれが完璧です。

こんな文章を書ける高校生が存在することが驚愕です。

ぜひ手に取って読んでみてください。

・実力の向上を目指して
・藤井七段の凄さをより体感するために
・伝説となるだろう棋士の初めての全局集として

藤井聡太全局集、「買い」です。

叡王戦本戦 渡辺(大)ー菅井戦

渡辺大夢五段は予選から4連勝でここまで勝ち上がってきています。

本戦トーナメント2回戦で佐藤名人に頓死を食らわせて大逆転勝ちの将棋が鮮烈でしたね。

菅井竜也七段も本戦で羽生竜王、行方八段と強敵を連続で破ってきています。

そして振り駒で菅井先生の後手番、こうなると戦型を期待せずにはいられないですね。

初手から
▲26歩 △34歩 ▲25歩 △33角 (第1図)

やはり、と言うべきか。

例によって菅井先生対策に3手目25歩を持ってきました。

第1図から
▲76歩 △42銀 ▲48銀 (第2図)

さあここが一つ目の注目ポイントです。

菅井先生は振り飛車で挑むのか、居飛車で戦うのか。

△84歩 ▲33角成 △同銀 ▲88銀 (第3図)

菅井先生は居飛車で戦う意志を見せました。

渡辺先生も時間を使わず33角成。

そして迎えた第3図は例の局面

3手目25歩に論理はあるか(5) (昨日の記事)

ここで22飛と回れないかというのが昨日の記事のテーマでした。

淡い期待を抱いてはみましたが

第3図から
△72銀 ▲77銀 △83銀 ▲36歩 (第4図)

まあ世の中そんなに上手いことは出来ていません。

私が昨日話した手を、菅井先生が今日公式戦で指すなんてそんな夢みたいな話はありません。

それにしても後手の83銀はどうも妙な感じです。

これはひょっとして…?

第4図から
△22飛 (第5図)

またまたやってくれました!

陽動角交換振り飛車とでも言いましょうか。

角交換振り飛車を嫌う3手目25歩に角交換振り飛車をかますさまは何度見ても痛快ですね。

ここで65角が気になりますが74銀43角成52金右で馬が御用です。

65角が打てないとなれば先手は駒組みを進めるしかありませんが、72金と締まれば後手陣はもう安泰、以下二手得を頼りに悠々と駒組みを進めます。

とは言ってもあくまでそれは理屈の話、気分と条件は良いですが実際に指せばもちろん一局です。

そして渡辺先生も面白い駒組みを見せてくれます。

局面を進めます。(第6図とします)

右辺はそれほど違和感がないですか66銀が一風変わった一手。

先手の狙いは何処にあるのでしょうか。

第6図から
△63金左 ▲86歩 △74歩 ▲77桂 △33桂 (第7図)

77桂まで進んで先手の構想が見えてきました。

これは次に89飛の地下鉄飛車を狙っています。

実はこの駒組みはアマチュアの間では有名な角交換振り飛車対策で、ここ一年ぐらいで市民権を得てきた印象です。

38金型で角打ちの隙をなくして玉頭方面でポイントを上げようという発想ですが、玉が薄くなりやすく、指しこなすのはなかなか難しいところです。

対して菅井先生の33桂が波紋を呼ぶ一手。

先手には56角の手段が生じています。

第7図から
▲56角 △54角 ▲34角 △76角 ▲56銀(第8図)

誘われているようですが渡辺先生は堂々と56角、当然菅井先生も想定内で54角が切り返しです。

43角成を防ぐと同時に76角で一歩を取り返して8・9筋からの攻めを見ています。

以下35歩45歩から戦いとなりました。

局面を進めます。

先手の桂得ですが玉の安定度に大きな差があり難しい局面です。

この95歩に同歩は98歩があるので68桂などが予想されていましたが渡辺先生はなんと同歩と取り、以下98歩85歩で玉頭から襲いかかりました。

局面を進めます。(第9図とします)

激しい攻め合いとなってこの局面が本局のハイライトです。

先手玉は右辺が広くて捕まえづらく、後手玉への攻めは分かりやすいので後手苦戦かとも思いましたが、次の一手が好手かつ決め手でした。

第9図から
△26香 (第10図)

空間に放り込んだ26香が絶妙手。

5分の考慮時間で放たれていることから見ても、随分前から狙っていたものだと思われます。

第10図から
▲同飛 △38歩成 ▲43歩成 △96馬 ▲58玉 △78馬 ▲48金 △37金 ▲同金 △同と まで(投了図)

以下は手続き、96馬が詰めろで入っては勝負ありです。

菅井先生が抜群の切れ味で寄せ切りました。

最後に一局を振り返ってみます。

序盤は3手目25歩に対し菅井先生がまたもユニークな順で角交換振り飛車を実現。

谷川戦に続いて3手目25歩を完全に咎めていると言っていいでしょう。

そして渡辺先生も注目の駒組み、地下鉄飛車こそ実現しませんでしたが有力な対策であることは間違いなさそうです。

中盤以降は難しい戦いで先手の玉頭攻めもかなりの迫力でしたが、終盤の26香一発で菅井先生がKOした印象です。

さあ3手目25歩に対し菅井先生は角交換振り飛車で2連勝。

そろそろ先手も3手目25歩を使いづらくなってくるんじゃないでしょうか。

そして26歩34歩に76歩と角が向かい合ったとき、そこは菅井先生の土俵です。

次はいったいどんな新構想を見せてくれるのか。

一ファンとして、菅井先生の今後の活躍がただただ楽しみです。

3手目25歩に論理はあるか(5)

3手目25歩に論理はあるか(4) (前回の記事)

最終回です。

図は谷川ー菅井戦の68銀に代えて88銀とした局面

ここで22飛が成立するのではないかというのが今回のテーマです。(テーマ図とします)

さてここから先手が68玉などと穏やかに指すと以下72金78玉82銀46歩83銀が進行の一例

これは通常形に比べて二手得の後手が十分な展開でしょう。

したがって先手はテーマ図から動いていきたいところです。

(1)83角 (2)65角 を順に見て行きます。

テーマ図から
▲83角 △74角 ▲同角成 △同歩 ▲83角 △85角 (第1図)

二度目の83角で後手が困ったようですが85角と切り返して角が狭いのはお互い様です。

次に72銀と角を取られてはいけませんから先手は85の角をどかして74角成を狙います。

第1図から
▲86歩 △76角 ▲78金 (第2図)

78金に代えて74角成とするのは67角成とされて桂当たりです。

以下79金とするしかないですがこれでは形が苦しく先手不満です。

78金と一度受けてから次に74角成を狙います。

第2図から
△72飛 ▲同角成 △同銀 (結果図)

74角成を受けて72飛はこの一手です。

角飛車交換となって結果図

先手は飛車を手にしましたが後手陣に隙はありません。

以下46歩44歩47銀73桂77銀54角のような進行が考えられます。

一局と言ってしまえばそれまでですが、先手の方が気を使う展開でしょうか。

一歩得の実利は大きいです。

テーマ図から (1)83角は手将棋ですが後手も十分に戦えます。

次にテーマ図から (2)65角を見て行きます。

テーマ図から
▲65角 △32金 (第3図)

65角にはダイレクト向かい飛車の要領で74角と合わせるのも有力ですが、32金が面白い指し方。

83角成で歩が取られないこと、先手の歩が25まで伸びていることに目を付けた一着です。

狙うはみんな大好き逆棒銀です。

第3図から
▲83角成 △24歩 ▲同歩 △同銀 ▲38金(第4図)

後手は居玉で逆棒銀を決行して気分は上々です。

先手が角を手放しているので15角の筋に気を使わなくて済みます。

38金は仕方のないところで代えて36歩では27歩同飛55角で決まります。

第4図から
△27歩 ▲同金 △45角 ▲68玉 △35銀 (結果図)

38金にも後手は攻め手を緩めません。

27歩と叩いて同飛には45角があるので同金ですが、それでも45角が痛打。

67角成を許すわけにはいかないので68玉と受けますが、結果図となっては後手の攻めが決まっています。

以下26歩にも同銀同金27歩、先手はとても持ち堪えられません。

テーマ図から (2)65角は32金〜24歩の逆棒銀が気持ち良く決まって後手優勢です。

まとめるとテーマ図から (1)83角は一局 (2)65角は後手優勢 となりました。

どうやら88銀に22飛は成立していそうです。

 

いかがでしょうか全国の振り飛車党のみなさん。

こちらが振り飛車党なのを見越して3手目に25歩と突いてくる居飛車党相手に思い切って84歩と突いてみませんか?

相居飛車なら負けないと思って角を換えてきたらしめたもの。

22飛と向かい飛車にしてやつらの度肝を抜いてやろうじゃありませんか。

3手目25歩に論理はあるか(4)

3手目25歩に論理はあるか(3) (前回の記事)

迎えた順位戦B級1組11回戦、菅井先生はここまで2勝7敗で残留を目指す上での大一番と言えます。

先手は谷川先生です。

初手から
▲26歩 △34歩 ▲25歩 △33角 ▲76歩 (第1図)

谷川先生の作戦は3手目25歩でした。

第1図から
△42銀 ▲48銀 (第2図)

ここで54歩や44歩なら振り飛車が濃厚です。

第2図から
△84歩 ▲33角成 △同銀 ▲68銀 (第3図)

菅井先生は84歩、羽生戦に続き居飛車で戦う意思を見せました。

対して谷川先生は9分の小考で33角成、飛車先を受けずに戦う展開と比較したものだと思われます。

菅井先生が84歩型を活かす構想を見せてくれるのか、どきどきしながら観戦していましたが次の一手は想像すらしていませんでした。

第3図から
△22飛 (第4図)

やってくれました。

角交換振り飛車を封じる狙いの3手目25歩に対し角交換振り飛車を実現しました。

しかもこの向かい飛車はこのまま収まってしまえば、従来の角交換四間飛車と比べて①先手から角交換している②四間飛車に途中下車していない で二手得です。

警戒して封じたはずの相手がより強力になって目の前に現れたのですから先手からしたらたまったものじゃありません。

実戦もその手得が存分に活きる進行となりました。

局面を進めます。

先手が6筋に位を張った局面ですが、後手の銀冠が完成しているのに対して先手は玉周りに不安があります。

これが後手が通常の角交換四間飛車だとすると78金・68金右の二手が入っている計算ですから先手玉の強度がまるで違います。

いかに序盤の二手得が大きいかがわかるでしょう。

そして実戦は上図からから54歩。

53角と打たせて玉頭の厚みで勝負する見事な構想で、結果も菅井先生の快勝となりました。

さあ、というわけで角交換振り飛車封じの3手目25歩に対して、菅井先生は素晴らしい構想で角交換振り飛車を実現し先手の3手目25歩を完全に咎めて勝利を収めました。

…とこうまとまればいいのですが、話はそう上手くはありません。

勘のいい方はお気づきでしょうが33角成同銀となったこの局面

ここで88銀とすればいいのではないかと。

即ち本譜で68銀22飛に83角と打つと88角と打たれて先手が困ります。

しかし68銀に代えて88銀なら22飛には83角で先手がいいのではないか?

これについては他ならぬ菅井先生が局後の感想で「68銀を見て22飛とした、88銀なら居飛車になるところ」と仰っています。

だったら今まで4回も掛けて何を説いてきたんだバカヤロウという声が聞こえてきます。

さてと

ここからが本題です。

88銀に22飛ってありませんか?

次回に続きます。

3手目25歩に論理はあるか(3)

3手目25歩に論理はあるか(2)(前回の記事)

3手目25歩に対し振り飛車で挑み続けた菅井先生ですが、遂に居飛車で対抗する日が来ました。

12/16放送のNHK杯3回戦、対するは羽生善治竜王(当時)です。

初手から
▲26歩 △34歩 ▲25歩 △33角 ▲76歩 △42銀 ▲48銀 △32金

48銀に84歩で後手が角換わりを志向したらどうなるかという話をしてきましたが、菅井先生は32金と指しました。

これは84歩よりも含みを持たせた手で雁木や力戦調の振り飛車になる可能性も残しています。

局面を進めます。

実戦は菅井先生が居飛車を確定させるも飛車先を突かずに進めました。

そして迎えた上図、84歩とこのタイミングで飛車先を突きました。

さてここが問題の局面です。

第1回の記事で述べたように、後手の飛車先交換を防ぐにはここで33角成が必要です。

しかしそれでは84歩型を維持している後手が通常の角換わりより理論的に得をしており、3手目25歩は菅井先生への実戦的な対策であって、そこに論理はないことを認めることになります。

一方例えばですが37桂85歩68玉のように進め、飛車先交換を許す代わりに早い動きを見せるのであれば、それは3手目25歩に論理を持たせたことになります。

羽生先生の選択は33角成でした。

数手進めます。

この局面で菅井先生は85歩と突き、形の上では通常の角換わりに戻りました。

ここまで85歩を保留したことにより駒組みの段階で先手の有力な変化を消していたのか、そもそも3手目25歩を咎めるつもりは無く角換わりの後手番をやるつもりだったのか、咎めるつもりで研究してきた形から外れてしまったので通常形に戻したのか、はたまた84歩型は見た目だけの得で実際に84歩型を後手が活かす変化は存在しないのか。

この辺りは菅井先生にしかわからないところで、私の棋力では推測することも到底できません。

しかし、あくまで結果的に見て「菅井先生は3手目25歩に対し居飛車で挑んだが、直接的にそれを咎めるには至らなかった」とは言えるでしょう。

後日行われた順位戦B級1組9回戦、畠山鎮七段との対局では、畠山先生の3手目25歩に菅井先生は振り飛車を採用し敗れています。

こうした状況で迎えたのが1/10の順位戦B級1組11回戦、相手は谷川浩司九段です。

続きます。