「藤井聡太全局集」を並べてみた
「藤井聡太全局集 平成28・29年度版」を一通り並べ終わりました。
デビュー戦となる加藤一二三九段戦からC級2組最終戦の三枚堂達也六段戦まで、全59局が収録されています。
構成について
第1部(全208ページ)と第2部(全99ページ)に分かれています。
第1部では29連勝達成の増田四段戦や朝日杯決勝広瀬八段戦など、特に重要な対局12局をピックアップして、藤井フィーバーに揺れ動く将棋界やプロ棋戦での戦法の移り変わりなどの話も交えながら、盤外のことも含めて一局一局が丁寧に解説されています。
第2部では全59局の内から第1部の12局を除いた47局が収録されています。
一局当たり見開きで2ページ、始めに初手からの棋譜を記した後、ポイントとなる手に解説が入ります。
また一局当たり4,5枚の局面図が付いています。
構成はよくあるタイプの全局集ですね、読みやすく並べやすいです。
そして全局を通して村山慈明七段が解説を担当しています。
これが素晴らしい。
一局を通して好手や疑問手、ポイントとなった局面については歯切れよく簡潔に解説し、遠大な構想や正確な大局観が顕れた局面ではその能力を絶賛しています。
しかし何より注目すべきは序盤戦です。
アマチュアではとても気付けない手順の工夫を解説してくれています。
例えばこの局面(C級2組順位戦 星野四段戦)
後手が藤井四段(当時)です。
ここから実戦は
△86歩 ▲同歩 △73桂 ▲78金 △65桂 ▲59角 △44銀 と進みます。
86歩の突き捨ては少し早い印象ですし、65桂と跳ぶ前に44銀と溜めてみたい気がします。
しかし何とこれが必然手順、86歩は73桂の前に入れる必要があり、44銀と先に上がると65桂と跳べなくなると言うのです。
この様な細やかな工夫が本書ではかなり取り上げられています。
村山七段の序盤知識と丹念な局後検討がないと出来ないことでしょう。
藤井七段と言えば圧倒的な終盤力と卓越した勝負術にどうしても目がいってしまいますが、精緻な読みに裏付けられた繊細な序盤も非凡なものだと気づかせてくれます。
そしてこの全局集、当の藤井七段による文章が一つだけ掲載されています。
それが本書の最初のページにある「はじめに」
たった1ページだけの文章ですがこれが完璧です。
こんな文章を書ける高校生が存在することが驚愕です。
ぜひ手に取って読んでみてください。
・実力の向上を目指して
・藤井七段の凄さをより体感するために
・伝説となるだろう棋士の初めての全局集として
藤井聡太全局集、「買い」です。
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