33金型早繰り銀(2)

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後手番で早繰り銀をする為には「2手稼ぐ」ことが必要だと前回の記事で説明しました。

今回はその仕組みを解説します。

下図をテーマ図Aとし、テーマ図Aまでの手順を見て行きます。

初手から
▲26歩 △84歩 ▲76歩 △85歩 ▲77角 △34歩 ▲68銀 △32金 ▲78金 △62銀 (第1-1図)

何の変哲も無い角換わりの出だしですが、図の△62銀で定跡を外れます。

ここは△77角成▲同銀△22銀として2筋の歩交換に備えるのが一般的です。

後手は▲25歩にどうするのでしょうか?

第1-1図から
▲25歩 △33角 ▲同角成 △同金 (第1-2図)

▲25歩に△77角成▲同銀△22銀と進めば「飛車先切らせ型角換わり」、△74歩▲24歩△同歩▲同飛△73銀と進めれば「極限早繰り銀」と呼ばれている戦法です。

本譜は△33角▲同角成△同金と金で24歩を受けます。

一般的に悪型とされている33金型ですが、手数だけで言えば後手は1手得です。

この手得が本戦法の根幹を成しています。

なお先手は△33角を取らずに▲48銀と進める指し方もありますが、これにはすかさず△42銀と上がります。

上図は先後ともに角交換をしにくく、ここからは角換わりや雁木をはじめとする様々な戦型を含みにした全く新しい序盤戦が始まります。

これについてはかなり重要かつ面白い内容なのでまたの機会に紹介します。

第1-2図から
▲77銀 △74歩 ▲48銀 △73銀 ▲46歩 △64銀 (第1-3図)

後手は居玉のままずんずん銀を繰り出します。

これは意地を張っているわけでは無く、先手からの速攻に備えている意味があります。

先手は例によって一直線に腰掛け銀に組みます。

第1-3図から
▲47銀 △42玉 ▲56銀 △75歩テーマ図A

さあ△75歩と突っかけてテーマ図Aです。

先手はここで▲65歩と突きたいのですが歩はまだ67にいます。

先手はここまで無駄な手を指していません。

すなわち後手は「2手稼ぐ」ことに成功した訳です。

そのカラクリは後手の玉型にあります。

後手の金銀は33金・31銀の形ですが途中の1手得を計算しなければ32金・31銀の形です(仮想図1)

一方で、通常の早繰り銀では金銀は32金・33銀の形となっています(仮想図2)

つまり後手は銀の移動を2手分省略し、手得した1手で金を33に上がり飛車先を受けています。

これが後手が「2手稼ぐ」方法で、後手ながら早繰り銀が「間に合っている」仕組みです。

テーマ図Aからは
(1)▲66歩△76歩▲同銀で7,8筋の歩交換を甘受する
(2)▲75同歩△同銀▲24歩△同歩▲25歩で反撃する
の2通りの指し方が考えられます。

それらの展開を見て行きたいところですが、その前にやらなければいけないことがあります。

皆さん本譜で1箇所引っ掛かる局面はありませんでしたか?

後手が△74歩と早繰り銀を目指した局面

ここで▲55角は大丈夫なのでしょうか?

普通は無理筋ですが33にいるのは銀ではなく金です。

角金交換で2筋で戦果が上がれば十分成立してそうです。

次回は本戦法を指す上で避けては通れない「▲55角問題」に挑みます。

↓次回の記事

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この記事を書いた人

徳島の将棋好き
"急戦で先攻する"が信条
33金型早繰り銀の開発者

コメント

コメント一覧 (2件)

  • こんにちは、最近33金型早繰り銀を使い始めたのでこのブログにはお世話になっております。
    質問なのですが、第1-3図から先手が36歩とつき、ここから37桂馬を保留しつつ出方を探られた時の対処法がわかりません。一例としてここから42 玉には37桂馬でテーマB図に合流、94歩には47銀、44歩には47銀、42玉、56銀の要領です。自分は今94歩、47銀、75歩、同歩、同銀、16歩に対する打開策がないか考えているのですがなかなか見つからないのが現状です。ちなみに同銀に58玉は打開手順を見つけることができました。

    • コメントありがとうございます。
      鋭い指摘ですね、少し長くなりますがお付き合いください。
      ▲36歩△94歩▲47銀△75歩▲同歩△同銀▲16歩に△86歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛▲87歩△82飛と銀交換に進めます。
      そこで▲37桂は△44歩で後手十分、▲35歩の反撃を心配されていると思うので解説します。
      ▲35歩に△65角と打ちます。
      以下(1)▲56銀は△87角成▲同金△同飛成▲88歩△84龍で難しいですが双方に主張があります。
      (2)▲56角には△同角と取り①▲同銀は△86歩▲同歩△64角で反撃します。
      以下▲34歩△44金▲47銀△86角▲48玉△59角成▲同金△89飛成▲69銀まで進んで良い勝負ですが、これは33金型早繰り銀の望む展開です。
      ②▲同歩の方が難解です。△35歩と手を戻し、▲24歩△同歩▲34歩△44金▲24飛△22歩▲23歩に△14角と打ちます。
      このときに57の空間を空けておいたのが重要で、これがないと▲22歩成△47角成▲31とと攻め合われて負けます。(本譜ではそこで△57銀が厳しく後手勝ちです。)
      △14角には▲58金と受けることになりますが△72飛と寄って、▲68玉には△47角成▲同銀△59銀▲69玉△58銀で寄り筋、▲77銀には△23角と払って形は悪いですが3歩得の実利は大きく後手持ちの形勢です。
      現在の見解は以上です。検討期間が短いため穴がある可能性はあります。
      何か気になる順があれば、遠慮なくコメント下さい。

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