「三間飛車藤井システム」を読んでみた

話題の新書「緩急自在の新戦法 三間飛車藤井システム」(著・佐藤和俊六段)を読んでみました。

一冊を通じて後手番で43銀型三間飛車に絞って解説しています。

構成は対穴熊編、対急戦編、対美濃編の三章に分けて手順を解説した後、最後の章で実戦を取り上げています。

対穴熊編はこの戦法の骨子、三間飛車に構えて相手の穴熊模様を見てから、右四間飛車、袖飛車、雀刺しのいずれかに飛車を振り直して猛攻を仕掛けます。

攻めのバリエーションがいくつかありますが、どれでもいいという訳ではなく「早い57銀には雀刺しが効果的」と言ったように細やかな理論がありその辺りも丁寧に解説してくれています。

攻め形を知る上でも有効でしょうが、手順の意味を理解することで序盤でペースを握れる確率が上がりそうです。

イメージと違ったのは仕掛けておいてから雁木に囲う展開が多いこと。

いつでも攻められる態勢を作っておいて、自分だけ有効な手を重ねて作戦勝ちを狙うというのは私には無かった発想で非常に勉強になりました。

対急戦編では先手の様々な急戦への対応を見ていきます。

43銀を早く決めている関係上、先手からの急戦は気になるところではあります。

斜め棒銀系の急戦は三間飛車が活きるのでそれほど怖くないというのは理屈としてわかりますが、その辺りの攻防もしっかりと手順を踏まえて解説してくれています。

怖いのは早仕掛け系ですがこれは四間飛車に振り直して32金型に組むのが基本となる対策。

普通なら居飛車から見て悪い気はしないのですが、端歩を突き越しているのが非常に大きくなかなか居飛車が良くなりません。

最後が最近流行りの左美濃への対策。

先手は銀冠穴熊を目指しますが、後手は右側に雁木を作って地下鉄飛車で攻めていきます。

アマチュア間でかなり話題になった構えですが、具体的な攻め方を知らなかったので大変参考になりました。

他にも先手の形によって石田流に組む変化もあります。

全体を通して言えるのは「妥協のない手順を極めて論理的に解説している、しかしそれ故に読者に求められる棋力はかなり高い」ということです。

特に第1章の袖飛車+雁木の形、第3章の地下鉄飛車はぎりぎりの攻めを通していて、仮に優勢とされる結果図まで進んでもそこから勝ち切るのは相応の棋力が必要とされそうです。

また美濃囲いに組んでゆっくり戦う以前からの振り飛車とは考え方から違うので、純粋振り飛車党の方も指しこなすのにかなり苦労すると思います。

とは言え居飛車力戦が得意な人も急戦への対応や、石田流での戦い方に慣れていない分、決して楽ではないでしょう。

この戦法をある程度指しこなすには“居飛車、振り飛車どちらも指せるアマ三段”ぐらいが最低ラインだと感じました。

私はアマ四段(自称)の居飛車党ですが、第1章の穴熊崩しはともかく、第2章や石田流にする変化がまだ理解できたとは言えません。

むしろ本書を大方理解出来たと言える頃には三間飛車藤井システムが立派な得意戦法になっているでしょう。

それぐらい戦術書としての完成度は高いです。

ということで総括

「とても勉強になるけどかなり難しいから心して掛かってね。」

ー本日の勉強ー
詰将棋30問 棋譜並べ 1局 実戦 1局 (1勝 R2164→R2183)

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この記事を書いた人

徳島の将棋好き
"急戦で先攻する"が信条
33金型早繰り銀の開発者

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