2手目△34歩での33金型早繰り銀は可能か?
33金型早繰り銀は角換わりの後手番における戦法です。
したがって2手目は△84歩を選択することになります。
しかし「相掛かりを禁じられている」などの宗教的な理由で、2手目に△34歩と突く人も多いでしょう。
2手目△34歩からの33金型早繰り銀が難しい理由、それでも採用する場合のアイデアを紹介していきます。
初手から
▲26歩 △34歩 ▲76歩 △32金 ▲25歩 △33角 ▲同角成 △同金 ▲78銀 (第1図)
2手目△34歩から33金型にする場合は必然の進行です。
角換わりの出だしと違うのは後手が1手得できていないこと。
ここから33金型早繰り銀を目指すとどうなるでしょうか。
第1図から
△84歩 ▲77銀 △85歩 ▲78金 △62銀 ▲48銀 △74歩 ▲46歩△73銀 ▲47銀 △64銀 ▲56銀 (第2図)
長手数進めましたがやってることは難しくありません。
後手は早繰り銀、先手は腰掛け銀の形を目指して、一直線に銀を繰り出しました。
ここですぐに△75歩と突くのは数手後に▲95角の王手飛車があるので、一手備える必要があります。
第2図から
△42玉 ▲66歩 (第3図)
△42玉に▲66歩の受けが間に合います。
通常の33金型早繰り銀では以下の局面になるので、1手得がいかに大きいかわかります。
第3図から
△75歩 ▲65歩 △76歩 ▲同銀 △73銀 (第4図)
第4図までは必然の進行です。
後手は銀を追い返されましたが、1歩を手持ちにしました。
通常の早繰り銀では仕掛けた甲斐はあったと判断しますが、上図では次の一手が絶好となります。
第4図から
▲77角 (結果図)
▲77角が△86歩からの歩交換を防ぎつつ、33の金に狙いを付けた絶好の攻防手。
通常の早繰り銀に対する手としても有力ですが、この場合は33にいる駒が銀ではなく金なのでより効果的になっています。
すなわちここから▲36歩〜▲37桂〜▲45桂と跳ねて行く手が厳しすぎるのです。
結果図は実際の形勢以上に後手が勝てない将棋でしょう。
何の工夫もなく早繰り銀にすると、1手得し損ねたことがモロに響きます。
第1図まで局面を戻します。
角交換で「33金型」が作られたこの局面。
これは本来「33金型早繰り銀」ではなく「阪田流向かい飛車」の定跡型です。
すなわちここから後手が△22飛と回って向かい飛車にする手があります。
もちろんこれで互角ですが、後手がやりたいのはあくまで「33金型早繰り銀」
阪田流向かい飛車をちらつかせつつ、局面の条件を良くしにいきます。
第1図から
△94歩 (第5図)
△94歩が工夫の一手。
▲48銀△95歩▲68玉△22飛のように進めば、後手は9筋の位が主張になります。
これを嫌って先手は△94歩に▲96歩と端を受けるのが自然です。
そこで後手は△84歩から「33金型早繰り銀」に打って出ます。
以下は同じように進んで上図で駒組みが完成です。(第6図)
第2図との違いは1点だけ。
端歩の交換が入っています。
そしてその恩恵で、第6図から△75歩といきなり仕掛けることができるのです。
第6図から
△75歩 ▲同歩 △同銀 ▲76歩 △86歩 ▲同歩 △同銀 ▲同銀 △同飛 (第7図)
第7図まで進んで、▲95角の王手飛車がありません。
これが端歩の交換の効果です。
王手飛車がないので、後手は▲56銀に△42玉を省略して、△75歩と一手早く仕掛けることができたのです。
第7図となっては後手の攻めが成功しています。
ただこれで万事解決というわけではなく、先手にも別の手段があります。
第6図から
△75歩 ▲66歩 △76歩 ▲同銀 △86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87金 △82飛 ▲86歩 (第8図)
▲66歩と一手遅れでもここを突きます。
後手は8筋の歩を交換しつつ、先手陣を大きく歪ませて大成功。
第8図以下△54歩▲65歩に△55銀とぶつけて優勢というシナリオでしたが…
第8図から
△54歩 ▲65歩 △55銀 ▲同銀 △同歩 ▲53角 (第9図)
後手は定跡型と比較して、端歩(の交換)が入っている代わりに、△42玉と上がれていません。
したがって銀交換後に▲53角が有効打になります。
第9図から△41玉に▲75角成
ここに馬ができると先手陣はかなり厚く、先手ペースです。
後手は銀交換の順は選べません。
第8図から
△42玉 ▲65歩 △73銀 (結果図)
▲65歩に△73銀とおとなしく引き上げて結果図
銀交換こそ出来ませんでしたが、2歩を持ちつつ先手陣を大きく歪ませました。
第4図と比べて後手陣は同じ形ですが、先手陣のまとまりが目に見えて違います。
この後は守備を堅めつつ、△64歩などでちょっかいを出していく展開になりそうです。
棋風が分かれるところですが、後手番の早繰り銀としてはまずまずとも言えます。
まとめます。
2手目△32金からの33金型早繰り銀は、自然に進めると「1手得し損ねたこと」が大きく響き先手が良くなります。
後手の工夫として、角交換直後に△94歩と端を打診し
(1)▲96歩と受けて来なければ△95歩〜△22飛で阪田流向かい飛車
(2)▲96歩と受けれくれれば△84歩から33金型早繰り銀
という指し方であれば互角の将棋にはなりそうです。
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