嬉野流の潰し方(2) 〜嬉野流対策“端角棒銀”〜
↓前回の記事
前回は端角棒銀の狙い筋を見てきました。
あまりにもうまく決まったので、今回は嬉野流側の修正手順を検討していきましょう。
ただし本記事では検討を打ち切る条件を2つ設けます。
①形勢にはっきりとした差が認められたとき
今日の私はかなり平静を取り戻しているので、詰みまで研究するなんてことはしません。
②「嬉野流」と呼べなくなったとき
初手▲68銀を愛している方、以降は棋理に沿った指し方をする方には触れません。
どうかそのまま初手▲68銀を指し続けてください。
ただし多くの方にとっての「嬉野流」とは「引き角+斜め棒銀で相手陣を突破または制圧する」ことを目標とした戦法のはずです。
端角棒銀を防ぐ為に▲46歩と構える、玉を整備して守勢に回る。
それはまだ「嬉野流」ですか?
その手を指すあなたの心に嬉野流の信念は生きていますか?
この問いに対する答えがYesでないなら、それはもうあなたにとって嬉野流ではありません。
そしてそんな戦法は後手にとっても怖くありません。
後手が嫌うのは先述した引き角+斜め棒銀を軸として主導権を握られる展開です。
それを早々に諦めてくれるのなら、後手からしても嬉野流ではないのです。
このことを前提として指し手を進めていきます。
第3図を再掲します。
第3図から
▲69玉 (第12図)
端角を直接緩和するなら、▲46歩と止めるのが自然です。
しかしそれには△74歩▲69玉△73桂▲48銀△86歩▲同歩△同飛▲87歩△85飛のような展開を後手に許します。
形勢はともかくとしてわざわざ先手が選ぶ展開ではないでしょう。
△83銀を見てから▲46歩と止めるのが勝ります。
第12図から
△83銀 (第13図)
上図から先述した(1)▲46歩の他に(2)▲66銀も考えられるので、こちらから見ていきましょう。
第13図から
▲66銀 △79角成 ▲同玉 △74銀 (第14図)
角換わりのような将棋になりました。
これは一局のようにも見えますが、結論から言うと既に後手優勢です。
理由ははっきりしていて、棒銀が受からないのです。
上図からのんびり▲26歩などとしていると△75銀が決まります。
第14図から
▲48銀 △86歩 ▲同歩 △同飛 ▲87歩 △82飛(第15図)
74銀の進路がないようですが、8筋の歩を交換することで解決します。
第15図から
▲57銀上 △32金 ▲26歩 △85銀(第16図)
▲45角の防ぎと2筋への備えとして、一度だけ△32金と手を入れておきましょう。
満を持して△85銀と進軍します。
第16図から
▲88玉 △86歩 ▲同歩 △同銀 ▲87歩 (第17図)
8筋を守る▲88玉はこの一手ですが、お構いなしに△86歩から進みます。
次の手はもうお分かりですよね?
第17図から
△同銀成 (第18図)
無論、突っ込みます。
第18図から
▲同金 △86歩 ▲同金 △同飛 ▲87歩 △82飛 (結果図)
△86歩で金の逃げ場所がありません。
結局のところ銀金交換となり、結果図で後手の優勢を疑う人はいないでしょう。
第13図から(2)66銀は棒銀が受からず後手優勢です。
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コメント
コメント一覧 (1件)
初めてコメント致します。
嬉野流に対する端角棒銀、大変面白く拝読しました。
これは嬉野流を使う自分にとって由々しき事態だと考え、大した棋力もない癖に自分なりの対策を考えてみました。にっし~様のご意見を賜りたく思います。
第13図より、先手は6六銀、4六歩に変えて1六歩と端歩を突きます。後手は棒銀をするために△7四銀と上がり、▲2六歩と進んだ局面で、端角棒銀の後手が△7五銀と出ますが、その瞬間に▲1五歩の端攻めを敢行します。
以下△同歩▲同香△5七角成▲同角△1五香▲7五角と進んでしまうと、後手は角香交換の駒損であり、さらに▲5三角成の先手でもあるので、これは明らかに後手不利です。
従って、先手からの1五歩に対して同歩と取ることはできず、端を無視して(▲1五歩)△8六歩▲同歩△同銀▲1四歩△2二角▲2五歩と進めることになりそうですが、こう進むと端角棒銀側が端に傷を抱えることになり、嬉野流側もまあまあやれる気がします。(△8七銀成に対しては、▲8八歩△7八成銀▲同玉と進めれば、すぐに何かが起こるわけではありません。)